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CVTとATの違いは?仕組みとメリット・デメリットも紹介

CVTとATの違い

クラッチペダルを操作しなくても、アクセルを踏んでいるだけで自動的にシフトがチェンジする変速機を、「オートマチックトランスミッション(AT)」と呼び、ほとんどの乗用車に採用されていることから、運転免許が「AT限定」という人も少なくありません。

ATという大きなくくりの中にはいくつかの種類が存在し、搭載車種が増加しているのが「CVT」という変速機であり、従来のATとはメカニズム的にもドライビング・フィーリング的にも、大きな違いがあります。

目次

CVTとはシフトショックがない無段の変速装置

CVTとは「Continuously Variable Transmission」の頭文字を取った略語であり、直訳するなら「絶えずに可変する伝動装置」となりますが、業界的には「無段変速機」あるいは「連続可変式トランスミッション」と呼びます。

基本的な構造は、エンジン側とタイヤ側の双方に2つの円錐状プーリーが互いに尖ったほうを中央に向け、ベルトを挟み込むような形で並んでおり、摩擦力を利用して動力を伝える仕組みになっています。

プーリーの円盤はシャフトに沿って移動でき、2つのプーリーの間の溝を通っているベルトの軌道直径を変更することで、動力を無段階で変更できるのです。

もっとも動力が必要となる発進時は、エンジン側ベルトの軌道直径が小さくタイヤ側は大きい状態となっており、車速が上がるにつれ比率は均等になり、さらにスピードがのってくるとプーリーの軌道直径が逆転し高速走行が可能な状態になります。

本来はもっと細かい数値ですが、低速走行時のベルト軌道直径比が1:2(エンジン側:タイヤ側)の場合、エンジンが2,000回転してもタイヤは半分の1,000回転しかしないので、スピードは出ませんが「てこの原理」によって大きな動力が発生します。

一方、高速走行時の軌道直径比が2:1(エンジン側:タイヤ側)だとすると、力は出ませんが同じエンジン回転数でタイヤは4,000回転するので、計算上4倍のスピードを出すことが可能です。

CVT自体は逆回転できないため、バック走行時は組み併せた「遊星ギア」などで逆転させるので、理論上は前進と同スピードで走行できますが、安全確保のためリミッターがかけられています。

現在の主流はベルト式およびチェーン式のCVTで、ベルトは低出力エンジンを搭載する軽量な車種、チェーンは高出力が必要な車種に採用されることが多くなっています。

ちなみに、ベルトやチェーンが存在しないトロイダル式や、トヨタのハイブリッド車種に採用されている電気式CVTなどもあります。

ショックの少ないスムーズな加減速

プーリーとベルトで滑らかに無段変速するCVTでは、AT車のような車速が変化するたびに起きるエンジン回転の上下がないため、シフトチェンジに伴うショックがほどんど発生しません。

変速ショックがなく回転数(エンジン音)もほとんど変化しないため、誕生当初のCVT車は「ぬめっとした加速が気持ち悪い」とか「こんなの大きなスクーターだ」などと揶揄する声がネット上にまん延していた時期もありました。

しかし、近年では日産が開発したエストロニックCVTなど、複変速機を備える次世代型CVTが誕生しており、以前のような加速時のもたつき感が大幅に改善されています。

トヨタもアイシンAWと共同で、従来のCVT無段変速機構に発進ギアを追加したダイレクトシフトCVTを開発し、レクサス・UX、およびRAV4のガソリンモデルなどに採用。

優れた燃費性能とショックの少なさは活かされつつも、CVT車を運転していることを忘れてしまうほどのリニア感を実現したといわれています。

CVTはエンジン出力の伝達効率が高く燃費が向上する

現在、国内で新車販売されている軽自動車の約8割、普通車でも約7割までCVTが普及してきたのは、エンジンの力を効率よく伝えて燃費を改善できるのが大きな理由です。

AT車では、エンジンの回転数の上昇とともに車は加速をし減速すれば再び低回転域に戻りますが、CVTはプーリー径を変化させることでギア比を無段階に調整でき、車速に応じてエンジン回転数を最適な領域に保ちます。

エンジンには「トルクバンド」と呼ばれる燃焼効率の良い回転域があり、一般的には3,000~4,000回転付近にあります。

CVTは車速が変化してもこの回転域を維持しやすいため、無駄な回転数の上下を抑えて燃費の良い走行が可能になるのです。

そのため、街乗りや渋滞など低速域で加減速を繰り返す場面において、従来のAT車よりも燃費で優位になりやすいといえるでしょう。

CVTは車体の軽量化・小型化に貢献する

CVTは部品点数が少なく多段化が進んでいるATより構造的にもシンプルであるため、軽量かつ小型な状態で車体に組み込むことが可能です。

軽量化は燃費性能向上につながるほか、シンプルで小型なため開発・製造・改良過程で発生するコストが安上がりなうえ、前述したような複変速機や発進用ギアを組み込むスペースも多く残されています。

CVTのデメリット

CVT最大の弱点はドライバビリティの悪さと言われ続け、エンジン回転だけが高まって加速感がついてこない違和感を「ラバーバンド・フィール」と呼び、ヨーロッパではCVTの代名詞になっています。

もう1つの弱点としてCVTのプーリー、特にベルト部分が滑りやすいため構造的に高排気量のハイパワーエンジンには、不向きである点も指摘されています。

また、高速走行時の燃費性能低下もCVTのデメリットといえます。

高速巡航時、エンジン側ベルトの直径は大きくなりますが、同時に摩擦面が増えベルトを押し出す力も増加するのですが、受け取るタイヤ側ベルトの直径は小さくなり受容力が減少します。

エンジンの押す力が持て余っている状態になり、受ける側が空回りしてしまう現象が発生、それがパワーロスにつながり燃費効率が悪くなってしまうのです。

ただし、それは時速60km以上で走行している時の話で、通常の街乗りならCVTのほうが、ATより燃費性能が勝っているため、毎日高速道路で長距離移動している車両を除けば、発生しないデメリットです。

ATとCVTとの違いは?自動的という点は同じ

ATとは、直進走行時に使用するD(ドライブ)レンジにシフトを入れ、アクセルを踏むだけで「1速→2速→3速→4速」とレンジが移動する変速機の総称で、自動的という点ではCVTと全く同じものです。

決定的な違いは、プーリーとベルトによって無段変速するCVTと異なり、ATにはリングギア・プラネタリギア・サンギアなどが存在することです。

複雑なギアの組み合わせることによって、1・2速などでは回転数を遅くしてパワーを増し、3・4速など高いギアでは回転数上げスピードを出す仕組みになっており、構造的に言えばMTのメカニズムとさほど違いはありません。

MT同様、歯車の組み合わせでガッチリ駆動を伝達できることから、大排気量車やハイパワー車でも使えるメリットがある半面、多段化していくに従い構造的に複雑で高価になるというデメリットも。

結果、ATは現在国内で売れ筋となっている軽自動車やコンパクトカーへの新規採用がめっきり減りました。

しかし、高級車やトラック、国産メーカーの海外向けモデルには、トルクを確実に伝達できるATがまだまだ採用されています。

DCTとCVTの違いは?MT車に似た感覚で走れる

DCT(デュアルクラッチトランスミッション)とは、2つのクラッチを使ってギアを切り替える自動変速機のことです。

通常のMTはクラッチ1つですが、DCTは奇数段用と偶数段用にクラッチが分かれていて、次のギアをあらかじめ準備しておき、変速信号を受けたとき瞬時に切り替えます。

簡単にいうと、AT車なのにMT車のようなキビキビとした走りが楽しめるトランスミッションといえるでしょう。

シフトアップの効率が良く、変速中も加速が完全には途切れないため加速性能にも優れ、自動変速でありながらMTより燃費性能が高いです。

DCTは前述したとおり2つのクラッチを使用しており、渋滞での低速走行や坂道発進のように半クラッチ状態が長く続くとクラッチが過熱しやすくなります。

車体に搭載するスペースの関係上、大型車ならオイルで冷却する湿式クラッチを採用できますが、小型車は簡易で軽い乾式クラッチで対応するしかありません。

高温多湿で渋滞も多い日本では、乾式クラッチ式DCTの過熱による不具合が発生しやすく、ホンダはフィットなどのリコールに悩まされています。

偶数段クラッチの温度上昇により樹脂ピストンが溶損し、シールが破損してフルードが漏れ、偶数段のクラッチが滑り、メーター内にトランスミッション高温警告表示がされ、発進または走行しづらくなることがあります。

引用元:HONDA 保証期間延長
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